
「価値」とは何か?ビジネスにおける本質的な意味
市場分析で「誰に届けるか」が明確になりました。次に考えるべきは「何を届けるか」、つまり顧客価値提案(Value Proposition)です。
価値の多様な形態を理解する:
「価値」と聞いて真っ先に思いつくのは、お金を払って得られるもの、そして払ったお金よりもどれだけ大きなリターンが得られるか(ROI:投資対効果)でしょう。
用語解説:ROI(Return on Investment)
投資した金額に対して、どれだけの利益・効果が得られたかを示す指標
しかし、価値にはより多様な形があります:
①社会課題の解決価値:高齢化、人口減少などの人材不足解消、AIによる効率化で生まれる時間やお金
②絶対的価値:最も大きい価値は命です。命より大きい価値はありません
③体験・経験価値:目に見えづらいですが、経験や体験がもたらす幸福感、成長実感
④インフラ価値:携帯電話やSNSのように、登場時はイノベーションでしたが、広く普及した後は「なくてはならないもの」として価値が大きくなり続けているもの
価値の本質的条件:
どの事例においても重要なのは、価値を感じるのはユーザーであるということです。提供する側がどんなに「すごい価値がある!」と主張しても、それをユーザーが価値と思わなければ、あるいは思わずとも自然にそれを必要とする状態でなければ、真の価値があるとは言えません。提供者の主張=価値ユーザーの実感・必要性=価値
新規ビジネスにおける価値発見の2つのアプローチ
後発ビジネス vs 新規ビジネスの違い:
後発ビジネスであれば価値がわかっている状態ですが、その価値が大きければ多くの企業や人がそのサービスを始め、そこには競合が多いレッドオーシャンという状態になります。
用語解説:レッドオーシャン
競合が激しく、価格競争に陥りやすい既存市場。血みどろの戦いに例えられる
よく「ニッチ」という言葉が使われますが、誰も手を付けない領域には2つのパターンが存在します:
- つけられない領域:技術的・資金的ハードルが高い
- つけない領域:気づかれていない、または価値が見えていない
この「つけない領域」を見つけて初めて、イノベーションが起きます。
価値を見つける方法論:
①マーケットイン(市場ニーズ発)
課題を持つ人(ユーザー)
↓
課題の明確化
↓
解決策(ソリューション)の開発
②プロダクトアウト(技術・製品発)
テクノロジー・プロダクト
↓
「これで何かできないか?」
↓
課題解決への適用
マーケットイン、プロダクトアウトはどちらも正論です。しかし、マーケット(市場)はプロダクトやテクノロジーの存在を知らないので、ソリューションとしての可能性を見出せない場合もあります。
最強のパターンの発見:
そこで、最強のパターンは何か?ニーズを持つ人自身も気づいていない課題を解決するもの──これが最大の価値を提供し、さらには競合がいない(少ない)ブルーオーシャンになると考えられます。マーケット知見+テクノロジー知見=潜在課題の発見
これを導き出すには、マーケットとテクノロジーの両面の知見が必要です。
F@iの価値提案仮説:「体験ファースト」という逆転の発想
スモールビジネスの基本原則:
前置きが長くなりましたが、ビジネスのスタートは仮説です。そして小さく始めて、まずは試しながら改良を繰り返すスモールビジネスが、リスクを少なくしながらスピード感のあるスタートアップを実現できます。
F@iが立てた核心仮説:
AIが持つ高品質な回答をまずは体験してもらうことで、潜在的な価値を見つけ出すことができるのではないか。
重要な視点転換:リテラシーが低い≠ポテンシャルが低い
「使ったことがない」「リテラシーがない」というのは、ポテンシャルが低いことを意味しません。**逆です。**イノベーションを起こすポテンシャルを秘めている可能性が大きいのです。そして本来は、安心・安全・公平に、誰もがよりよい生活になるように、それぞれの事情によって活用すべきものです。
「最初の壁」を超える体験設計の重要性
共通する学習の壁:
デジタル技術、金融リテラシー共に共通するのは、最初はちょっと難しいということです。でも理解して使いこなすと、誰もが便利さと楽しさを覚えるものです。
これはスポーツや趣味などでも同じような経験が誰にでもあるのではないでしょうか?
学習プロセスの真実:
覚えてしまうと、楽しくてはまってしまう。「こんなに面白いものなのに、なぜみんなやらないのか?」──それは最初が難しいからです。
学ぶ、覚える、慣れるは、興味が低い状態では苦痛に近く、挫折の主要因になります。しかしその状態を超えると、次に来るのは成長の実感です。この状態では、どんなにつらいトレーニングや勉強でも、楽しささえ覚えてしまいます。
「天衣無縫の極み」から学ぶ本質:
人気漫画『テニスの王子様』に「天衣無縫の極み」という境地の技があります。これはテクニックなどではなく、純粋に楽しさを感じる状態です。この状態は実は境地ではなく「覚えたての楽しさ」であると作中で説明されています。
つまり、最大のモチベーションを引き出すには、まず楽しさを感じる体験の提供──これこそが、ユーザー自身も気づいていないニーズなのではないでしょうか。
F@iの具体的価値提案:「体験から入るAI」の実現
感動レベルの成果物という価値:
専門家がAIと何度も議論を繰り返し、最終アウトプットを高品質な資料として仕上げたものは、従来のものに比べて感動を感じるほどの成果物が生まれます。これを知っているAIリテラシーが高い人は、誰かにそれを伝えたくなるほどの感動を覚えます。
F@iの価値提案の核心:
この感動的な成果を、AIをよく知らない人たちにその成果だけを体験させてあげたら、過去にはない価値の提供になるのではないか──これがF@iの顧客価値提案の仮説です。
添付図「体験から入るAI」で示される3つの価値:
①体験ファースト
- 「まず勉強して」ではなく「まず結果を見て」
- ハードルを極限まで下げる設計
②代理AI活用 + 種明かし
- FPがAIを駆使して高品質な成果物を作成
- 使用したプロンプト(AIへの指示文)も提供
- 次回から自分でもできる環境を提供
③LINE完結の安心感
- 誰もが使うLINEで、日常的なチャットコミュニケーション
- アプリインストール不要、アカウント作成不要
- 高品質でFor You(あなた専用)な回答を得られる体験
価値提案の流れ:体験(感動)→理解(興味)→実践(自立)
興味を先に持った状態で、トレース可能なプロンプトの提供により自分でもできる環境を得る。この順序が逆の体験を得ることで、これまで高くて超えられなかった壁(ハードル)を超えるという価値の提供ができるのではないか──これがF@iの核心的な価値提案です。
💡 ビジネス設計のポイント:「潜在価値」の発見法
F@iの価値提案設計から学べる重要なポイント:
- ユーザー自身も気づいていない課題を発見する視点
- マーケットとテクノロジーの両方の知見を組み合わせる重要性
- 体験の順序を変えるだけで大きな価値が生まれる可能性
- **「最初の壁」**こそが最大のビジネス機会である認識
価値提案は思いつきではなく、深い洞察と論理的な仮説構築から生まれます。
次章では、この価値をどう収益化するか?というビジネスモデルの設計に入っていきます。どんなに素晴らしい価値でも、持続可能なビジネスにならなければ意味がありません。F@iはどのような収益構造を設計したのでしょうか?



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